人に囲まれているのに、なぜか孤独だった。飲み会はいつも盛り上げ役で、誰とでも話せる。なのに、ふと立ち寄ったスーパーで小さな子どもの手を引く父親を見た瞬間、なんとも言えない空白を感じた。37歳。婚活を始めてみたものの、好きかどうかよくわからない。そんな状態で交際を続けた先に、思いがけず答えが見つかった話をしようと思う。
結婚相談所を選んだ理由
きっかけは、本当にたいしたことじゃなかった。
休日の昼、近所のスーパーで惣菜コーナーをうろうろしていたとき、隣に父親と3歳くらいの子どもがいた。子どもが「これがいい」と唐揚げを指さして、父親が「しょうがないな」と笑いながらかごに入れた。それだけの光景だ。
なのに、その場からしばらく動けなかった。
自分の手のひらにはひとり分の惣菜が入ったかご。別に悲しくもないし、焦っているわけでもない。ただ「あ、俺、何かが足りてないな」とぼんやり思った。
それまで婚活を真剣に考えたことはなかった。出会いがないわけじゃない。社交的だし、女性との会話も別に苦手じゃない。でも気づいたら、ちゃんと付き合ったのは30代前半が最後で、それ以降はなんとなく続かないパターンが続いていた。
一度、マッチングアプリを試したことがある。マッチングは普通にできた。会うとそれなりに楽しいし、向こうも悪くない反応をしてくれる。でも3回目、4回目あたりで「この人でいいのかな」という感覚が出てきて、そのまま自然消滅みたいなことが何度かあった。同じことを繰り返している自覚はあった。問題は相手じゃなくて、自分の側にあるような気がしてきた。
「ちゃんとサポートしてくれる人がいる場所じゃないと、また同じことになる」
それで結婚相談所を調べはじめた。
マリッジオーシャンを選んだ理由
3社、無料相談に行った。
最初の2社は話を聞いてくれるというより、プランの説明が中心だった。悪くはないんだけど、なんとなく「入会させる場」な感じがして気分が乗らなかった。
マリッジオーシャンで話を聞いてくれたのは、女性のカウンセラーだった。
アプリでうまくいかなかった話をしたとき、彼女はすぐにアドバイスしてこなかった。「そうでしたか」と言って、少し間を置いて、「続けて聞かせてもらえますか」と言った。それだけなんだけど、なんかほっとした。
正直、最初は「ここで大丈夫かな」と半信半疑だった。他の相談所みたいに「こうすればうまくいきます」と言ってくれる方が安心感があると思っていたから。でも話し終えた後、「ここにしよう」と決めていた。
自分でも「なぜ?」と聞かれると困るんだけど、押しつけてこない感じが自分には向いていると思った。これって、婚活に限らず「自分の話をちゃんと聞いてもらえる場所」を探している人には刺さるポイントかもしれない。
お見合いでの印象
入会してから最初の2ヶ月で4回お見合いをした。うち2回は自分から断られた。理由は教えてもらえないやつで、「条件面でのミスマッチ」と書いてあったけど、まあそういうことだろうと思った。少しへこんだけど、引きずるほどじゃなかった。
5回目に紹介されたのが、久美さん(34歳・事務職)だった。
プロフィール写真は笑顔だけどどこかちょっとかたい感じで、正直「どんな人だろう」くらいの印象だった。お見合い当日、先に着いて待っていたら、少し遅れてきた久美さんは「ごめんなさい、道を一本間違えて」と言いながら席についた。
第一印象は「普通だな」だった。
でも話し始めると、こちらが何か言うたびにちょっと考えてから返してくれる。おもしろいことを言ったわけでもないのに、笑ってくれるポイントが妙にツボで。帰り際にカウンセラーへの報告のLINEを打ちながら、「なんかよかったな」という気持ちだけあった。「この人が好きだ」じゃなくて、「また話したいな」くらいの感覚だったけど。
仮交際〜真剣交際
仮交際に入って、月に2〜3回会った。毎回楽しかった。
でも「好きかどうか」がよくわからないまま時間が過ぎていった。
ほかにも仮交際中の方が1人いて、その人のことも嫌いじゃなかった。2人を比べたりして、なんかいやな自分だなと思いながらも、どちらに進むべきかがはっきりしなかった。
1ヶ月半くらい経ったとき、カウンセラーとの定期連絡でそのまま話した。「久美さんのこと、好きなのかどうかよくわからないんです。会うと楽しいんですけど、それだけで進めていいのかどうか」と。
カウンセラーは「そうですか」と言って、特に何も言わなかった。
最初は「アドバイスくれよ」と思った。でも後になって、あのとき何か言われていたら、たぶん言われた通りにして、自分で考えなかっただろうなとも思う。
その後、久美さんと一度だけ、ちょっとしたすれ違いがあった。
デートの帰り道に、久美さんが「なんか今日、翔さんのこと全然わかんなかった」と言ってきた。こちらは普通に話していたつもりだったから、最初は意味がわからなかった。「え、何が?」と返したら、「いや、いっつも楽しそうにしてるんだけど、何考えてるかわかんないというか」と言われた。
少しムッとした。自分では全力で場を盛り上げているつもりだったから。「そういうもんかな」と曖昧に返して、その日は解散した。
駅のホームでひとりになって、なんか落ち着かない気持ちがずっとあった。電車の中でスマホをいじる気にもなれなかった。
翌日、久美さんにLINEした。「昨日のこと、ちょっと考えてた。俺、確かに本音で話すのが苦手かもしれない」と。
少し間があって、既読がついた。返信は「言ってくれてよかった。私もうまく言えなかったし、ごめんね」だった。
完璧な返しじゃない。でも、そのぶんだけリアルだった。胸のあたりがすっと楽になった。
次に会ったとき、久美さんは特に昨日の話を蒸し返すわけでもなく、普通に「今日どこ行く?」と言ってきた。なんかそれで、「あ、この人でいいな」と思った。感動とかじゃなくて、ただそう思った。
真剣交際に進んだのは、その翌週だった。
プロポーズ・成婚
真剣交際に入ってから3ヶ月ほど経った、特に何でもない平日の夜だった。
近所の定食屋で夕飯を食べていた。久美さんが「この肉じゃが、なんか実家の味に似てる」と言って、自分が「それいいね、家庭の味って感じ」と返したあたりで、なんとなく言った。
「結婚しよか」
我ながら、なんともそっけない言い方だった。
久美さんはしばらく肉じゃがを見てから、「急だな」と言った。
「急じゃないけど」
「今日、何かあったっけ」
「別に何もないけど」
しばらく無言で、久美さんがまた肉じゃがを一口食べた。
「うん、いいよ」
それだけだった。
感動的なシーンにはほど遠かったけど、なんか笑えた。店員さんが水を足しに来るタイミングもあって、二人でちょっと笑った。
その後、結婚相談所に成婚の報告をしたとき、カウンセラーが「おめでとうございます、どんな感じで?」と聞いてきたから経緯を話したら、「らしいですね」と言われた。ほめてるのかどうかよくわからなかったけど、なんか正解な気がした。
仲人より一言
翔さんは、初回の相談から「聞いてほしいタイプだ」とわかりました。アドバイスが必要じゃなくて、話せる場所が必要な人。だから、基本的にはただ聞いていました。
正直なところ、久美さんとうまくいくかどうか、私にも途中までわかりませんでした。「好きかどうかわからない」という状態は珍しくないけど、翔さんの場合は自分でちゃんと向き合えるタイプだという感触があったので、あまり口を挟まないようにしていました。
すれ違いがあった翌日に自分からLINEしたこと、正直に話せたこと。そこで決まったんだと思います。
プロポーズのエピソードを聞いたとき、「そうだろうな」と思いました(笑)。
末永くお幸せに。
(マリッジオーシャン カウンセラー 田中)
もし「好きかどうかよくわからない」という感覚を抱えたまま婚活に踏み出せずにいるなら、まずは話だけ聞いてもらう場所として、相談所の扉を叩いてみることも一つの選択肢です。
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